フリーパワーの凄さを経営学的に分析する

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みなさんはフリーパワーという製品を知っていますか?自転車のペダルのところの普通のギヤ(チェーンホイール)と取り替えてつかうギヤなのですが、これがスゴイんです。その製品の凄さもさることながら、経営学的に見てもよく考えられた製品なんです。ではどうすごいかを説明していきます。

製品としての凄さ

フリーパワーは、普通の自転車(いわゆるママチャリでOK)のペダルがついているギヤ(チェーンホイール)に替わる部品です(以下の写真参照)。

この部品を交換するだけで、あら不思議!

  • こぎ出しがめちゃ軽くなる
  • 約20%の加速性向上
  • 最高65%筋肉負担軽減

などの劇的効果が得られるんです。これが実物の写真です。

パット見、何が違うのかよくわかりませんよね。

このチェーンホイール、ギヤへの動力伝達部5箇所に伸縮性の強いシリコンが使われています。どのような構造になっているかというと、以下のような構造です。

販売代理店OlympicのHPより抜粋

自転車を漕ぐ時に一番力を使うのは漕ぎ出しです。自転車に限らず、物を動かすときには初動が一番力がかかるのです。その漕ぎ出しでペダルを回すとシリコンが圧縮され、軽い力で動力エネルギーを蓄積します。その後、圧縮されたシリコンの反発力でペダルの初動をアシストするというものです。

「なんだそれだけ?」

と思われた方もいらっしゃるかも知れませんが、この機構を考え出せることがスゴイんです。詳しくは後述しますが、この製品のコンセプト、マーケティング戦略の観点から見てものすごく良くできているんです。

ターゲティングとポジショニング

漕ぐのが楽な自転車と聞いてぱっと思い浮かぶのは電動アシスト自転車でしょう。だから、「電動アシスト自転車でいいじゃん」って思った方も多いかも知れません。しかし、電動アシスト自転車はそこそこ値が張りますし、充電の手間もかかります。なにより、バッテリーを積んでいるので自転車そのものの重量が重たいんですね。

電動アシスト自転車のメインターゲットは主婦層。今の時代では、買い物やお子さんの送り迎えを自転車で行うパパママがメインターゲットでしょう。しかしそのメインターゲットの多くは、お子さんや買い物の荷物を前後に抱え、非常に重たくなった自転車を運転しなければなりません。電動アシスト自転車の漕ぎ出しが楽だとはいえ、自転車そのものが重ければ取り回しがしづらくて困ることでしょう。

また、電動アシスト自転車は効果で手が出ないと思っている方も多いでしょう(お子さんを自転車に乗せている方を見ていると、あまり電動アシスト自転車が普及しているようには見えません)。

電動アシスト自転車は重いし高いので買いたいとは思わないけど、重い荷物やお子さんを乗せて運転もしなきゃいけない、という層をメインターゲットにしていると考えられます。このターゲティングが見事にハマっているのです。

また、電動アシスト自転車でOKと思っている顧客からのスイッチングは特に意識されていません。このポジショニングによって、電動アシスト自転車との差別化も図れています。

価格

価格は9,000円~12,000円という価格に抑えられています。電動アシスト自転車を買うことを考えれば、ママチャリ+フリーパワー(+工賃)で25,000円程度で済むのはかなりリーズナブルです。

電動アシスト自転車は高いと考えているメインターゲットにフィットする価格です。

チャネル

特に見事なのがチャネル戦略です。

フリーパワーは株式会社フリーパワーが特許をとって独占製造している製品ですが、販売は全国130店舗の代理店を通して行われています。この非常に広い代理店網は街の自転車屋から大型スーパーの自転車売場まで網羅しています。2020年6月時点で東北地方がまだ手薄ですが、その他の地域は広くカバーされています。ほしいと思ったら近くの自転車屋さんにも置いている可能性があるということです。

そして、このフリーパワーは自転車屋さんにとっても様々な恩恵があるんです。普通のママチャリに後付でつけることができるので、工賃を取ることができます。さらに、定期的なメンテナンスが必要なので、自転車屋さんでサポートを受けることが出来るんです。このサポート費を取ることが出来るというのが大きい。

今までの自転車は買ったらあとはパンクの修理ぐらいしか自転車屋さんの仕事はありませんでしたが、ママチャリにもメンテナンスをする必要性が生まれ、それによって街の自転車屋さんの売上につながるのです。

定期的メンテナンスを請け負うという名目で、年間サポート料をとれば、困った時にすぐに持ってきてもらえます。そこでフリーパワーだけでなく、ブレーキやペダル、ライトや車輪など他の部分のチェックをすることでより安全に自転車を利用することが出来るようになるのです。

プロモーション

フリーパワーは実は大々的なプロモーションはやっていません。一度TBSの「がっちりマンデー」という番組で、森永卓郎さんが「これスゴイんですよ」といって紹介したぐらいです。

その他は、夕刻のニュースに取り上げられたりと、主にパブリシティによる認知に頼っているようです。

本製品を製造している株式会社 FREE POWERは宮崎にある中小企業。もしかしたら大々的に宣伝して受注が入りまくると生産が追いつかないのかも知れませんね。生産が追いつかないとクレームにつながったり別の懸念が出てきます。

この辺のコントロールも意図的にやっているとしたら素晴らしいですね。

まとめ

画期的な自転車ギア、フリーパワー、いかがでしたか?

電動アシスト自転車があると嬉しいんだけど、重いし高いし・・・という層(かなりの潜在顧客がいると想定)をメインターゲットとし、そのターゲット層が抱える「自転車の漕ぎ出しが辛い」という問題点を見事に解決する製品を開発し、メインターゲットがすぐ手に入れられる販売店網とサポート体制を敷いて、リーズナブルな価格で、需給バランスを調整しながら提供しています。

マーケティング戦略のお手本のような製品ですよね。

私は昨年自転車で事故って2箇所骨折&手術をしてから、妻に自転車は禁止されているのですが、妻がたまに乗っているママチャリが漕ぎ出しが本当に重いんです。今度近くの自転車屋さんに持ち込んでフリーパワーを装着してもらおうと思います。

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