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デザイン思考という言葉、聞いたことのある方も多いと思います。
最近ではバズワードの粋を超え、商品開発やサービス開発を行う際には当たり前に取り入れている会社も多数あります。しかし、考え方の大枠は理解できても具体的に何をやればいいのかわからないことは往々にしてあるもの。こちらでは、そもそもデザイン思考がなぜ注目されるのかに加え、マンガ「宇宙兄弟」の中から学べるデザイン思考のエッセンスについてご紹介します。
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デザイン思考が注目される背景
なぜデザイン思考が注目されるのでしょう。
かつて、1990年台前半ぐらいまでは、ものやサービスがあふれかえっているとはいえ、大量生産大量消費の社会はまだ健在でした。作ればそれだけ売れるという時代の商品開発の現場は、とにかく新しい商品を出すのが優先され、使い手がどのような事を考えているかは二の次とされてしまっていました(今でもそういう会社はありますが)。
しかし、平成不況が訪れ、ものやサービスが全く売れなくなります。正確に言うと、消費者は「本当にほしいと思ったもの、必要だと感じたものにしかお金を払わなくなった」のです。そこで企業側は商品開発やサービス開発の方向転換を迫られます。消費者が何を考えているのかにひたすら耳を傾け、潜在的なニーズだけでなく顕在的なニーズを喚起して、さらに使いやすさまで考えてやっと買ってもらえるということに気づき、商品開発やサービス開発の手法を大きく変えました。ここで出てくるのがデザイン思考です。よく「イノベーション」と一緒の枠組みで語られることが多いデザイン思考ですが、そんな仰々しいものではなく、身近な商品開発にも大いに適用できる方法なのです。
デザイン思考の概要
マインドセット
デザイン思考を語る上で最も重要なポイントは、デザイン思考のプロセスではありません。源流にある考え方が最も重要です。デザイン思考のプロセスはあくまでツールであり、その源流にある考え方を理解していないとツールを使いこなすことはできないからです。デザイン思考に関する書籍やWebは数多くありますが、この源流の考え方をちゃんと記したものは少ないように感じます。源流の考え方は、私が思うに以下です。
- 失敗を推奨する
- 品質より数を重視する(数を出すことで品質を上げる)
- スピード最優先
- 徹底的に利用者目線
特に、失敗を推奨することに関しては、やっているつもりになりがちで、その実できていないことが多いのが現実です。どんどん失敗してどんどん改善していくことが望まれます。プログラム開発でバグをなるべく多く出すことが求められるのに似ていますね。最初から完成度の高いものは求められません。そのかわり、完成度20%でもいいからアウトラインを作ってみんなの意見を聞くことが求められます。実際、このほうが最終的な品質も高くなり、納期も短縮できるのです。
身近な具体例で考えてみましょう。
AさんとBさんにプロジェクトリーダーがお客様への提案書をお願いした場合を考えます。
Aさんは、自分でシナリオを考え、資料を最後まで作成してからリーダーのレビューを受けました。
Bさんは、プロジェクトのメンバに聞きながらシナリオを考え、ストーリーが目次レベルでできた時点でリーダーのレビューを受け、それから資料作成を行いました。
さてどうなったでしょうか?
結果、Aさんはレビューでかなりのダメ出しをされ、結局資料をゼロから作り直すことになりました。
Bさんは資料の体裁のみにコメントが入ったため、その部分の微修正だけで資料を完成させました。
もうおわかりですね。
- Aさん → 結果として資料はゼロから作り直したため品質は低かった。さらに納期も守れなかった。
- Bさん → 最初のシナリオ作りに時間はかかったものの手戻りは少なく品質は確保。納期も守れた。
日本人に多いのがAさんのタイプです。真面目なものだからついつい自分の仕事として抱え込んでしまい、周りに聞くことも考えず作り込み、結果、ボツになってしまう。これは、「何もやっていないのと同じ」なんです。かたや、Bさんは「失敗を推奨する」考えで動いているので、自分のシナリオが修正されることをなんとも思いません。色んな人の意見を聞いて良いと思ったものをどんどん取り入れ、すぐリーダーのレビューを受けます。こうすることにより、最終的な品質を高く保ち、納期も予定通りあげることができるのです。
このように、デザイン思考のマインドセットを持つことで、日常の仕事の中でも高い品質とスピードを確保することができるのです。
プロセス
デザイン思考のプロセスは以下のとおりです。
観察・共感 | 実際の利用者を見つけ、観察し、ありのままの利用方法を受け入れて可視化する |
問題定義 | 可視化された情報から、利用者が気づいている問題点と気づいていない問題点を洗い出す。利用者が気づいていない本当の目的を定義する。 |
アイデア創出 | 本当の目的の達成に向けたアイデアを創出する。質よりも量を重視する。 |
プロトタイピング | 目的を達成するアイデアを高速で作る。必要最低限の機能でOK。 |
テスト・検証 | プロトタイプを市場に投入しテストマーケティング。改善点は高速で改善する。 |
この、5つのプロセスをじっくりやるのではなく、高速でスパイラルさせます。つまり、テスト・検証で終わりではなく、また再度観察・共感に戻って問題定義して・・・を繰り返すのです。つまり、試行錯誤ですね。この繰り返しを行うことにより、商品やサービスの顧客に対する満足度や品質が上がっていくのです。
宇宙兄弟に見る応用例
今までデザイン思考の概要を見てきました。ここからは具体例として宇宙兄弟のあるシーンを活用して理解を深めていきましょう。
舞台は、宇宙飛行士候補生たちが宇宙飛行士になる訓練を受けているとき。訓練の過程で、キャンサット(小型の疑似人工衛星。作中で作ったのは空中で放出され、自動制御で目的地に向かうもの)を作ることになりました。さて、どのようにして作っていったのでしょうか?
マインドセット
「失敗を知って乗り越えたものなら、それはいいものだ」
失敗を推奨し、失敗を乗り越えることによっていいモノができあがる。まさに、デザイン思考のマインドセットを体現しているセリフです。
観察・共感
「宇宙飛行士が6人もいて1人も考えなかったのか?”キャンサットが本物の宇宙船だったとしたら”って。自分の隣りにいる宇宙飛行士をコイツに乗せて打ち上げるつもりで、全部の作業をやってたか?」
キャンサットを作る作業で行き詰まっていたときに、NASAの技術者ピコの言葉で主人公のムッタたちはハッとします。
キャンサットが本物の宇宙船だとすると、利用者は自分たち宇宙飛行士です。その宇宙飛行士を無事に帰還させることができるのかがこの訓練では問われている、ということに気がついていくのです。まさに、デザイン思考の最初のプロセス、利用者に対する共感ですね。
問題定義
「地面のちょっとした障害に負けないローバーにするには・・・」
ローバー(キャンサットが地面に着地したあとに目的地に向かうための2輪車のようなもの)が宇宙飛行士にとって乗り心地の良いものであるためには、地面のちょっとした障害も吸収するだけの柔軟なサスペンションなどが必要になります。利用者である宇宙飛行士にとっての問題点は何かを明確にしているシーンです。
アイデア創出
「できればタイヤの直径を5~6cm大きくしたいんだよな」
「障害をジャンプして飛び越える装置でも追加するか」
「カサが開くみたいに広がるタイヤはどう?」
キャンサットを打ち上げ、着陸したあとにローバーを目的地に一番早く到達させるために、あらゆるアイデアをどんどん出しています。質よりも量。とにかくどんどんアイデアを出しているシーンが印象的です。
プロトタイピング
出たたくさんのアイデアをもとに、プロトタイピングプロセスで試作品を作ります。そして実際に走らせてデータを取り、微修正を繰り返していきます。
テスト・検証
実際に飛ばしてみて、着地、走行を繰り返し、データを取り、また修正し・・・この繰り返しによって、キャンサットとローバーの品質は格段に上がっていきます。
さて、この結果どうなったか。ムッタたち主人公チームは宇宙飛行士チームの中で2位。もちろん漫画の世界なので、結果はその後の展開を考えてどうとでもできるのですが、2位にいたるまでのプロセスがデザイン思考そのものだったと思いませんか?
今回はデザイン思考に的を絞りましたが、宇宙兄弟には日常生活やビジネスに活かせるたくさんのシーンが出てきます。
そして、デザイン思考は実際のビジネスでもよくある話。ぜひ身につけて実践してみましょう。
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