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和製MBAとも言われる中小企業診断士。一体どんな資格でどういうビジネススキルが身につけられるのでしょうか?2012年に資格を取得し、企業に勤めながらさまざまな活動を行ってきた私の体験談を元にお伝えしたいと思います。
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中小企業診断士でどんな力が身につくの?
普通に企業で働いているだけでは身に付きづらい3つの力が身につきます。
経営に関する幅広い知識
一次試験の多肢選択式試験は全部で7科目あり、全科目の平均が6割を越えかつ4割を下回る科目が一つもないことが合格条件です。マークシートかと侮ることなかれ。そのほとんどはケース問題であり、実際に中小企業が直面するであろうケースを題材に選択肢が作られています。ですから、日本語だけを見ると全て正解に見えてしまうような選択肢になっており、難易度は高いといえます。7科目の詳細は後述しますが、取り扱う分野は
・ 経営戦略論概論
・ 競争戦略論
・リーダーシップ論
・マーケティング
・店舗/販売管理
・生産技術/オペレーション
・財務会計
・管理会計
・税務会計
・コーポレートファイナス
・マクロ経済学
・ミクロ経済学
・会社法
・著作権法
・コンピュータ技術/ネットワーク基礎
・情報システム開発
・統計
・中小企業の昨今と今後
・中小企業向け施策
と、かなり幅広いです。
中小企業診断士は『中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家』です。ですから、弁護士や会計士の方々のように深い専門知識よりは、中小企業を取り巻く環境の激変に対応できるように、ある程度の深さでかなりの幅広さをもたせた試験範囲になっているのです。このあたりが和製MBAと言われる所以でしょう。論理的に考え、書き、伝える力
一次試験に合格すると二次試験を受験する資格が得られます。二次試験はケース問題です。A4に3ページほど、とある企業の置かれた状況が描かれており、企業ごとに4問~5問の設問に論述で答えるタイプのものです(それぞれの設問で字数制限あり)。一企業につき80分。全部で4つの企業についてのケースを解きます。4つの企業のテーマはあらかじめ決まっており、それぞれ
Ⅰ.組織・人事
Ⅱ.マーケティング
Ⅲ.生産・技術
Ⅳ.財務です。この二次試験がいちばんの曲者。正解が公表されませんので、どう対策を立てれば良いのかわかりません。しかし、回答は論述式ですから、採点する側も人間のはず。であれば、誰がどう読んでも明快で分かりやすい日本語を書くのが必須であると想像できます。
設問で問われたことに対してダイレクトに答える、これだけ書けば簡単なのですが、人間というものは自分自身の経験を元に考えてしまうもの。ケースに全く書いていないことを書いてしまうとアウトです。
問われた内容をよく咀嚼し、ケースに書いてある内容に沿って、相手の分かりやすい平易な日本語で丁寧に答える必要があるのです。試験対策などでこの繰り返しを行うことによって、論理的に考え、書き、伝える力が培われていきます。これは技術ではなく、自分で鍛えて身につけなければならない、言わば技能です。
失敗を糧とし乗り越える力
中小企業診断士の資格を取得するには一次試験と二次試験という2つのハードルを超えないといけません。しかし、この2つのハードルがとても高いのです。一次試験の内容は、大学で経営学部にいるか、企業で経営戦略部門にでもいない限りほとんどの方が初見の内容でしょう。
そして二次試験は正解がわからない中でどうすれば合格に近づくための解答が書けるか、ひたすら自分と向き合って自分と戦う時間が続きます。それは失敗の連続です。
私は予備校に通っていましたから毎週テストがあるわけです。そのたびにデキない自分の結果をこれでもかと突きつけられます。自分で出した解答ですから言い訳の仕様がありません。すべて自責で考えるしかないのです。
そのようにして何度もデキない自分と向かい合い、心を折られても食らいつくことによって、失敗を自身の糧として乗り越えていく力が身についていきます。
仕事の現場でもありませんか?たとえば商品開発がうまく進まない、たとえばうまく売上が上がらない、たとえば顧客の高い満足が得られない・・・。ともすれば「でもあれは~~~」と言い訳をしたくなるものです。
しかし、これらをすべて真摯にとらえ、自分自身全力で取り組んでいるかを自身に問い、自身の糧として乗り越えていくだけの強靭なハートが身についていくのです。
中小企業診断士って何ができる資格なの?
さて、かなりのビジネススキルが身につけられる中小企業診断士ですが、資格を取得したら実際に何ができるようになるのでしょうか?
弁護士であれば法律相談や法廷での仕事、会計士であれば会計監査など、その士業でしかできない専門の業務があります。しかし、中小企業診断士は専門業務がありません。中小企業診断士でないとできない仕事というものがないのです。そのため、資格を取ったものの活かすことができず、結局資格失効してしまう方がいるのも事実です。
しかし思い出してみてください。中小企業診断士に期待されているのは、『中小企業の経営課題に対応するための診断・助言』です。ですから、言い換えれば、経営課題を的確に抽出し、経営状況を診断してアドバイスをすることであればどんな手段であっても中小企業診断士の仕事であるといえるのです。
私は資格を取得して5年の間に、
・経営関連雑誌への執筆(連載)×数十本
・大学の非常勤講師
・セミナー講師
・財務診断/助言(数社)
・リサーチ企業のアナリストレポート作成×数十本
などを行いました。
一方で、勤めている会社では学んだ知識を活かしてマーケティング戦略の立案などにも携わり、身につけたスキルをフルに活用して活動をしています。
友人の中小企業診断士のなかには、何人も独立して会社を作った人たちがいます。中小企業向けコンサルティングをやっている人もいれば、自ら事業を立ち上げて運営している人もいますし、人それぞれです。
専門業務がないかわりに、幅広い知識を活かすフィールドはどこにでもあるといえるでしょう。
試験科目と受験日程は?
試験は多肢選択式の一次試験と論述式の二次試験があります。毎年8月10日頃に一次試験が行われ、10月20日頃に二次試験が行われます。合格発表は12月10日前後ですね。試験科目と内容は以下のようになっています。
一次試験(1~4を一日目、5~7を二日目に実施)
1.経済学・経済政策(主にマクロ経済論・ミクロ経済論)
2.財務・会計(主に財務会計・管理会計・ファイナンス)
3.運営管理(主に店舗/販売管理・生産技術/オペレーション)
4.企業経営理論(主に経営戦略論概論・競争戦略論・リーダーシップ論・マーケティング)
5.経営法務(主に会社法・著作権法)
6.経営情報システム(主にコンピュータ/ネットワーク基礎・情報システム開発・統計)
7.中小企業経営・政策(主に中小企業の昨今と今後・中小企業向け施策)
二次試験(1~4を一日で実施)
1.事例Ⅰ(組織・人事)
2.事例Ⅱ(マーケティング)
3.事例Ⅲ(生産・技術)
4.事例Ⅳ(財務)
難易度はどのくらい?
大体一次試験の合格率が20%ぐらいで、2次試験の合格率も20%ぐらい。トータルで見ると4%~5%が合格率となっているようです。
昨年2016年の結果ですと、合格者数/受験者数の比率は
一次試験 → 2,404人/19,444人=17.7%
二次試験 → 842人/4,539人=19.2%
トータルで見ると単純計算で17.7%×19.2%=3.4% かなり昨年は厳しかったようですね。
中小企業診断士とMBA、違いはあるの?
和製MBAと最初に書きましたが、これは人それぞれ解釈が異なります。学んでいる内容はほぼ同じと考えて良いでしょうが、学び方と合格したあとに大きな違いがあります。
- MBA
- 厳しい面
入学するために試験がある。また毎回ケースにもとづいた議論が行われ、必ず何かしらアウトプットを出すことを求められる。宿題も膨大。 - オイシイ面
2年間落第しないように通えばMBAホルダーとして認められる。大手企業の受講生が多いためビジネス上の太く強い人脈ができる。
- 厳しい面
- 中小企業診断士
- 厳しい面
年1回の試験だけでゼロイチの判断をされる(落ちる人は10年以上落ち続ける)。議論をするというよりは、企業のケースと自分との1対1の戦いを延々と繰り返す。最後は一人で受験するスタイルなので人脈は自分から動かないと作れない。 - オイシイ面
だれでも受験できる。そしてやめようと思えばいつでもやめられる。MBAより取得にかかるコストが低い(予備校にかかる費用はMBAに比べると1/10程度)。
- 厳しい面
私は、それぞれの良さがあるのでどっちが良いという議論自体あまり意味がないと思っています。お金があればMBAも取りに行きたいぐらいですし・・・(あぁお金w)
いかがでしたか?中小企業診断士のこと、少しは分かってもらえたでしょうか?結構難易度が高い割には儲からなそうだな、と思われたそこのアナタ!10年後に人工知能に奪われる仕事の中に弁護士と会計士が入っている一方で、中小企業診断士は奪われない確率のほうが高いという結果をご存知ですか?
専門業務がない代わりに、自分で身につけた知識・技術・技能を活かしてどんなふうにビジネスを広げる事もできる無限の可能性を持った資格であると私は思っています。もっともっと認知度が上がってほしいなぁと思います。あ、いや、認知度を挙げるために私も何かしなければいけませんね。
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